上田市におけるアオマツムシの研究   上田六中 関谷 圭史
1.はじめに
 アオマツムシは中国からの帰化昆虫である。日本で最初に記録されたのは1898年東京の赤坂である。長野県での最初の記録は、1980年の南木曽町である。アオマツムシはサクラ・ウメ・カキ等の一年枝に卵を産む。したがって、苗木と共に持ち込まれ、移動した場所がたまたま良い環境であるとそこで繁殖すると思われる。上田での記録は、1986年別所温泉(藤沢氏)、1988年新田、1991年上田公園・北小学校・大屋、1992年上田原などある。1993年の冷夏の年には、市内を調べたがまったく鳴き声を聞かなかった。1999年、上田公園、天神町、常磐城から、各1個体の鳴き声を聞いたとある(上田市誌 自然編より)。
 2005年9月15日。緑が丘の自宅の木の上で、コオロギのような昆虫の鳴き声を聞く。木の上で鳴いているので、大変不思議に思い、その昆虫を捕まえて調べてみたところアオマツムシであった。自宅のまわり、秋和の交差点付近の街路樹、公園の桜並木など、いたるところでその鳴き声を聞くことができる。もはや、完全に上田市に定着している。 2006年には、アオマツムシが上田市に、どのくらいの範囲に分布しているか調べた。

2.調査方法
 とにかく、高い声で、にぎやかに鳴くので、鳴き声から、その存在が確認できる。車の窓を開け、できる範囲で、鳴き声を手がかりにセンサス調査を行った。
(1)9月 4日 国道18号線 秋和〜新田
(2)9月 5日 上田原交差点〜古舟橋〜秋和交差点
(3)9月 7日 上田バイパス 秋和〜新田
(4)9月 8日 国道143号線 小泉〜上田橋〜花園
(5)9月 9日 山口方面 国道144号 住吉〜本原
(6)9月11日 築地バイパス
(7)9月15日 北小〜上田駅 国分〜新田 上田市街地
(8)9月18日 上田市緑が丘周辺
(9)9月19日 秋和〜天神町 公園下道路
(10)9月20日 上田大橋〜古舟橋 千曲川右岸堤防道路
(11)9月23日 上田駅周辺 千曲川右岸堤防道路

3.結果(わかったことの箇条書き)
(1)雨の日は鳴かない。明るいうちから鳴いている個体もわずかある。緑が丘の太郎山登山口の沢では、昼間から鳴いている個体がいる。
 緑が丘では、午前中になく個体も確認した。
(2)矢出沢川沿いや神川沿いに鳴き声を多く聞く。矢出沢川など、川 沿いに樹木が連続的に分布しているところでは、川沿いに分布をひ ろめている可能性がある。千曲川では、特に橋の近くのニセアカシア林に鳴き声を聞く。林の ない部分では、確認できない。連続的な分布は確認できない。やは り、道路沿いに分布を広げている可能性もある。
(3)国道18号線、18号線バイパスなど街路樹のある道路では、連 続的に分布している傾向がある。川東の市街地では、街路樹のある道路沿いに連続的に分布している 場合が多い。
・国道18号線上田バイパス、上田城趾公園下道路などトチノキの街 路樹では、鳴き声を聞く。国道18号線沿いのユリノキの街路樹に も、鳴き声をよく聞く。上田公園東側のケヤキ並木、桜並木にも、 鳴き声をよく聞く。北小学校の林、桜並木、それに続く街路樹にも 鳴き声をよく聞く。
・鷹匠町のプラタナスの街路樹では、その声を聞かず。海野町のヤナ ギの街路樹では、その声を聞かず。材木町上田しんきん付近、ホテ ルルートイン付近にも、街路樹があるが、アオマツムシの声は聞か ない(上田しんきん付近の街路樹は連続してない)。また、比較的 新しく植えられた(平成16年に完成)、上田駅前の樹木や街路樹 には(お城口、温泉口ともに)アオマツムシの声を聞かない。駅前に 多い街路樹はシラカンバである。
・道路に街路樹のない、川西地区にも分布しているが、連続的ではな い。国道18号線でも 国分地区のように、街路樹のないところでは、 アオマツムシの声を聞かない。
・上田駅の周辺では、駅ビルやリヴィン裏の段丘面の林に鳴き声を聞 いた。
(4)国道沿い、緑が丘などの市街地では、カキの木で、必ずといって よいほどその声を聞く。ツル植物 キュウイ、ブドウなどでもよく 鳴いている。
(5)リンゴ畑(果樹園)の中では鳴き声を聞かない。消毒をこまめに 行う影響だと思われる。
(6)文献によるとアオマツムシは、明かりに集まりやすく、車のライ トに取り付くこともあるようだ。しかし、外灯に集まったり、家の 光に集まったり、車のライトに集まるのは今のところ見たことがない。
(7)10月7日。上田第三中学校では、12:30頃、アオマツムシ が鳴いている。気温が下がるにしたがって、早い時間から鳴き出す 傾向がある。10月になり、鳴き声はか弱くなる。
(8)10月15日。緑が丘、上田バイパス付近。15:00頃、アオ マツムシのか弱い鳴き声を聞く。10月21日には、同じ場所で鳴 き声を聞くことができなかった。

※2008年度 追加のコメント
(9)2007年。センサーカメラのフィルム交換の折、日向小泉地区で、アオマツムシの鳴き 声を聞く。千曲川左岸でも分布を広げていることがわかる。

(10)2008年。千曲川左岸地区を詳しく調査。いたるところでアオマツムシの鳴き声を確認 する。右岸の道路と違い、並木のない道路が多いが、民家の樹木を植えてあるところでは、 ほとんどの場所で鳴き声を聞く。六中北西のサクラ、上田原駅への並木など、個体数が多く 激しい鳴き声を聞く。

(11)道路の街路樹の少ない千曲川左岸地区では、浦野川沿いの樹木、山際の樹木づたいに分布 している様子がみられる。


4.考察・まとめ
 昨年、緑が丘地区や秋和地区で確認したアオマツムシであるが、今年度は、どのくらいの範囲に分布しているのか調べてみた。上田市には、かなり広範囲に分布していることがわかった。アオマツムシの分布の拡大については、植木について広がるのではないか。車などについて広がるのではないかなど、いろいろ説があるが、道路沿いの街路樹、川沿いの樹木、段丘面の林などに沿って分布していることから、連続的につながる樹木に沿って、隣の木へ移動することを繰り返し、分布を広げているものと思われる。それもかなりの早さで移動しているものと思われる。
 しかし、街路樹でも、鳴き声を聞かぬところもある。まだ、アオマツムシが移動してきていない、その樹木を好まない等の可能性もある。今後も調査を続けることにより、わかってくるものと思われる。
 アオマツムシは一生樹木の上で生活できる昆虫で、ふるさとは中国の福建省である。寒さには弱いのではないかと思われるが、国道144号線沿いでは、上田市と旧真田町境付近(670m)で鳴き声を確認している。それより上では、まだ、鳴き声を確認していない。太郎山では黄金川沿いに、上信越自動車道太郎山トンネル東側付近(700m)までで、その鳴き声を確認している。
 上田第六中学校の周辺では、まだ、アオマツムシの声を聞かないが、上田原や築地地区ではその声を聞く。
 しかし、まだまだ六中付近の調査が不十分です。アオマツムシの声を聞いたら、教えてください。よろしくお願いいたします。