2010年10月14日(木) 校長講話 「本当に強い人」

 10月13日(水)、まもなくはじまる「なかよし月間」に先立って、校長先生より「本当に強い人」と題して、次のようなお話がありました。

 

   来週の金曜日22日から、11月の22日までの1ヶ月間、「なかよし月間」という大事な月です。「なかよし」と言う言葉はもう皆さん知っているかと思いますが、皆さんは普段から本当に「なかよく」お友達と遊んだり、生活をしたりしているでしょうか?
 この「なかよし月間」というは、「本当の"なかよし"ってどんなことかな」とか「"なかよし"になるにはどうしたらいいのかな」とかいうことを一人一人が本気で考え、実際に自分で心がけて実行していくことなんですね。この月間中にいろいろなことで「なかよし」について、本気になってもう一度深ーく考えてみてほしいなーと思います。

 それでは、今日は、校長先生が以前にある小学校に勤めていた時の、隣のクラスで起きた出来事についてお話をしたいと思います。題名をつけるとしたら「本当に強い人って、どんな人?」です。
 一人の男の子のお話です。その男の子は小学校4年生で、太郎という名前の子でした。太郎君は、名前からするととても強そうで、ケンカ好きのように思えますが、でも、太郎君は、4年生になるまでお友達と一度もケンカなどしたことのない、とてもおとなしい男の子でした。いつもお友達の後ろについて行って、みんなの前では思い切ったことのできない子でした。
 この太郎君が、ある日、とてつもない大ゲンカをしたのです。その日、太郎君と同じクラスの別の男の子が持ってきた珍しい鉛筆削りが、休み時間になくなってしまいました。みんなで教室中を探しましたが、どこにもありません。しばらくすると、その男の子が「もしかして、美代子、美代子が盗んだのではいか?」と、大きな声で言い張り、美代子さんが盗んだという疑いをかけられるようになってしまいました。美代子さんも太郎君と同じように、クラスの中ではおとなしく、女の子同士でキャッ、キャッと騒ぐようなことのない女の子でした。また、美代子さんの家では、お父さんが病気で働けなくなり、お母さんが一人で一生懸命働いているという家だったんですね。
 そんなことを理由に、鉛筆削りがなくなった男の子は、疑いを美代子さんに持っていったのです。
 鉛筆削りなど盗っていない美代子さんは、「私は、盗っていない。」と、必死で叫びました。でも、周りにいた多くの男の子たちも美代子さんが盗ったという同じ気持ちになり、美代子さんを疑って、美代子さんの筆箱を取り上げて調べようとしました。
「やめて。」と、美代子さんは必死で筆箱にしがみつきました。その弾みで、美代子さんの筆箱は床に落ち、中に入っていた物が飛び散りました。でも、その男の子の盗られたという鉛筆削りなどは、どこにもありませんでした。その代わりに、もう使えそうもないほどに小さくまで大事に使った鉛筆と黒くくすんだ消しゴムが、みじめな姿であちらこちらに散らばりました。すると、「カバンだ。カバンを調べろ。」と、ある男の子が言いました。もう、その姿はまさしく「いじめ」でした。
 その時です。それまでじっと我慢していた太郎君が、身体をブルブルと震わせて立ち上がったのです。「なぜ、なぜ、美代子さんが犯人か言ってみい。なぜ、美代子さんが盗ったというのか言ってみい。」と、みんなのいる教室で美代子さんのカバンを無理やり調べようとしている男のたちに言い寄ったのです。その声は、今までに太郎君が出したことのない大きな声でした。そして、しばらく教室の中は、しーんと静まりかえっていました。

 この話は、太郎君の担任の先生から聞かせてもらった話ですが、校長先生も太郎君のことをよく知っていたので、先生はとても感動し、今でも忘れられないお話でなんす。
 おとなしい太郎君が「もう、我慢ができなく身体をブルブルと震わせて立ち上がった」という様子が目に見えるように浮かび、これこそ本当の勇気だ。「太郎君、やったなー、すごいなー。」と、校長先生は思いました。いつもはおとなしいが、他の人が悲しんでいる時に立ち上がることのできる人が、本当に強い人なんだなと思いました。"力の強い人"とか"言うことが強い人"が、本当は強いんではないなーと思いました。
 そして、今のお話のように盗っていない美代子さんを犯人扱いにした男の子たちのように、人間として恥ずかしいことをした、あるいはいけないことをしてしまったと感じる心を決してなくしてはいけないと思いました。

 さて、皆さんは今のお話を聞いて、太郎君のこと、美代子さんのこと、そして周りにいた男の子たちを、どのように思いましたか?クラスで話し合って、感想などがあったら校長先生に教えてください。 

 これからの「なかよし月間」で、「本当の仲良しってどういうこと」「今、自分たちは仲良くできているのか、ある人を避けてはいないだろうか」等々、う~んと深く考え皆さんで話し合って、いけないことは是非なくしてほしいと願っています。この「なかよし月間」だけでなくいつでも、どこでも、このような「いじめることはいけないこと」「人として恥ずかしいことはしないこと」「仲良くすること」「勇気を持つこと」、そして「強い心をもつこと」・・・このようなことについて深く考えていってくれる人間になってほしいと願っています。
 校長先生は以前に皆さんにお話ししました。とにかく「中央小学校は楽しい学校である」と思える学校を、皆さんと一緒にを作っていきたいと願っています。

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