2021年1月 8日(金) 校長講話「3学期始業式」より

はやぶさ2のチャレンジ

 

  明けましておめでとうございます。今日から3学期のスタートですね。自分らしい目標を立て、そのための計画と準備をしっかりとして頑張っていきましょう。

 

  さて、2学期の終業式で「はやぶさ2のチャレンジ」についてお話ししました。はやぶさ2の2度のリュウグウ着陸というチャレンジは見事成功しました。しかし、成功したからよかったのですが、失敗していたらどうするのでしょう。JAXAの国中均所長が「2度目はやめよう。」と提案したことは間違っていたのでしょうか。「チャレンジ」とは何か、皆さんも考えてみましたか。

 

「チャレンジ」について、はやぶさ2のチームリーダーの津田雄一プロジェクトマネージャーが、はやぶさ2が地球を出発した6年前にこんな興味深いことを言っています。

 

 『プロジェクトが失敗しない簡単な方法ってなんだと思いますか?過去に成功した方法を繰くり返すことです。でも新しい発見は得られませんよね。それにやる気も起きません。プロジェクトは10年以上かかるものが多いので,同じことの繰り返しでは,関わるメンバーがずっと高い意欲を保ち続けることが難しくなります。だから私は「これはおもしろそうだ!」と思ってもらえる仕掛を,できるだけ盛り込むようにしています。はやぶさ2の場合,小惑星のサンプルを採集する時にクレーターができますが,はやぶさにはなかったカメラを取り付けることで,クレーターができる様子を撮影できるようにしました。撮影することが決まったら,地質学者から「だったらこんなデータが取れたらおもしろいんじゃないか」という意見が出てきたりもして,新しい挑戦の輪が広がっています。実現できるものも,できないものもありますが,こういう繰くり返しで,プロジェクトはより有意義なものになっていくと思うのです。』

 

 この津田プロジェクトマネージャーがリードして、初代はやぶさが失敗した着陸を2回も成功に導いたのです。長い時間をかけ綿密な計画と準備を重ね、「これはおもしろそうだ。絶対に成功させよう」と、チーム全員で考え工夫する作業を繰り返した「新しい挑戦の輪」だったのです。これが「はやぶさ2のチャレンジ」です。

 小惑星の砂を集めることに関しては、アメリカの探査機がはやぶさ2とケタ違いの量の回収を進めています。しかし、衝突装置を使って人工クレーターをつくり、地面の中にある砂を集めるというアメリカもできなかったことを実現した可能性がはやぶさ2にはあるのです。

 

小惑星の表面から深さ10センチまでの地層は太陽放射や太陽風による影響を受けます。今回はやぶさ2がつくったクレーターの深さは1.7メートルもあります。風化の影響を受けずより純粋に46億年前のままの地下の砂と風化した表面の砂を比較することができます。きっと宇宙に関するさまざまな新しい発見があることでしょう。

 

 津田プロジェクトマネージャーはこんなことも言っています。

 

「趣味でもスポーツでも,勉強でもなんでもよいです。興味を持ったことはとことんやってみてください。そこから,少しずつ自分のやりたいことや得意なことが見えてきます。大人になってから自分が得意だと思うことは,結局,子どもの頃ころに興味があったこと,楽しいと思って,とことんやったことの集合体だと思うのです。仕事でも生活でも何かに迷った時,とことんやった経験があるとそれが自分の道しるべとなります。」

 

  さあ、皆さんも自分の目標へ向けて「チャレンジ」です。今も宇宙のかなたを一人で旅する「はやぶさ2」に負けないように頑張りましょう。