2012年8月22日(水) 8月22日 2学期始業式でのお話

 

2012年度(平成24年度) 上田市立第四中学校 2学期始業式 2012/08/22


 7月27日から始まった夏休みも終わり、いよいよ今日から2学期が始まりました。今日ここに皆さんが健やかに夏を乗り切り、希望の眼差しを持って集まってくれたことを、大変うれしく思います。今回の夏休みは、何と言っても関心を寄せたのはイギリスの首都ロンドンを中心に開催された第30回の夏のオリンピックだと思います。世界の204の国と地域から10、931の選手が参加してイギリス各地の競技場で世界のトップアスリートが競い合い、スポーツを通じて、感動や夢、歓びや勇気、努力することの素晴らしさ、また人と人の支え合いや友情と平和の大切さを世界に発信してくれました。

 皆さんはどの種目のどの場面が心に残っているでしょうか。また、競技時間の関係で夜遅くテレビ観戦をし、朝を迎えた人もいるかと思います。その時、普段あまり意識しないイギリスと日本の間の時差8時間を実感した人もいたかもしれません。
 ロンドンオリンピックでは、金メダル獲得数について、日本は目標としていた数のおよそ半分の7個にとどまりましたが、メダル獲得総数では38個と過去最高数となりました。日本選手が獲得したメダルについて、何十年ぶりにメダルを取った、という種目がいくつかありました。その中の一つボクシング種目で村田諒太選手が48年ぶりに金メダルを獲得した、というニュースを眺め、48年前、それは東京で開かれたオリンピック以来であることに気づき、日本で初めて開かれた東京オリンピックをわくわくしながら見ていた小学生の自分を思い出しました。

 今回のロンドンオリンピックは数々の素晴らしい記録や技、力を私たちに見せてくれましたが、別の視点からオリンピックを眺めると、新たな発見も多くあったように思います。

 まず、日本にとって今回のロンドンオリンピックは、記念すべき区切りの大会でした。それは、日本がオリンピックに参加してから丁度100年目に当たる大会であることです。日本がオリンピックに初めて参加したのは1912年、丁度100年前に当たります。1912年は明治45年、明治時代最後の年ですが、この年、日本はスウェーデンのストックホルムで開かれた第5回オリンピックに初参加。参加選手は今回のロンドンオリンピックの日本選手団の数293名に対して、なんとたったの2名。2名は陸上競技の選手で400m競技とマラソンに出場しています。

 もう一つ日本にとって区切りがいい記録がこの大会で出ました。それは夏のオリンピックでの日本の金、銀、銅のメダル獲得数が、丁度400個になったことです。実はこのメダルのなかに特別な銅メダルが2個含まれているのです。それは最近のオリンピック種目はスポーツが中心ですが、60年以上前のオリンピックでは「芸術競技」という種目が正式競技として認められていました。「芸術競技」、聞き慣れない競技名ですが、種目の内容は音楽や美術(絵や彫刻)、文学、建築などにおいて、スポーツに関係する作品を作り上げ、それを採点して順位を競うものでした。現在のオリンピックでは考えられない競技種目ですが、かつては多くの大会で行われていました。1936年のドイツのベルリンで開かれたオリンピックで二人の日本人が描いた絵が(絵の題材は競馬とアイスホッケーだったようですが)見事銅メダルを獲得しました。この2個の銅メダルが、先程述べた特別な銅メダルなのです。オリンピックを世界のトップアスリートの大会と考える人にはこの「芸術競技」で獲得した銅メダル2個は別物であると考えている人がいて、日本の総メダル獲得数は398個でまだ400ではない、と言う人もいるようです。みなさんはどう思いますか。

 目の前で繰り広げられる競技から感動や驚き、勇気を与えてくれるオリンピックも、以上のように歴史という側面から眺めてみると、新たな事実が浮き上がってきます。さらに世界という視点で考えることもできます。みなさんも見たことがあると思いますが、新聞等で発表された国別のメダル獲得数の表があります。あの表をじっくり眺めてみると、様々なことが浮かび上がってきます。時間があったら表を眺めてみてください。金メダルを取った国は参加した204の国と地域のうち54カ国、そしてすべての金メダル302個のうちの57%に当たる172個の金メダルをわずか7カ国が独占するように獲得しています(金メダルを10個以上取った7カ国)。それはアメリカ合衆国、中国、イギリス、ロシア、韓国、ドイツ、フランスの7カ国です。この7カ国は世界のなかでどういう立場にある国なのでしょうか。逆に今回金メダルを一つも取れなかった150の国と地域とは世界のなかでどういう立場や状況にある国でしょうか。夏休み中にロンドンオリンピックで得た様々な感動や人々の支え合い、そして新たな知識を、是非、2学期は、つなぎ合わせて、皆さんの豊かな想像力をフルに活用して世界の広さと不思議さ、そして新しさ見つけ出してください。